不動産の相続について


不動産相続の流れ

不動産を相続した場合、どんな手続きを何から始めればよいか分からない方も多いのではないでしょうか?
ここでは、不動産を相続した時に知っておくべきことや、やらなければならないことを分かりやすくご紹介します。この記事をご覧になることで、不動産を相続した場合に必要な手続きの全体の流れをつかみ、やるべきことを順序だてて整理することができます。

[不動産を相続した場合の手続きの流れ]

被相続人(故人)が亡くなってから、相続不動産の名義を相続人に変更するまでの流れは以下のようになります。
1、相続の発生
2、遺言書有無の確認
3、相続財産の調査・確定
4、遺産分割協議
5、遺産分割協議書の作成
6、相続登記の申請

相続の発生

被相続人(故人)が亡くなったら、死後7日以内に死亡診断書を取得して死亡届を役所に提出する必要があります。
死亡診断書は、病院で亡くなった場合には、病院の医師が診断し診断書を作成します。
自宅等で亡くなった場合には、かかりつけの病院に連絡し、かかりつけ医に死亡診断をしてもらう必要があります。それ以外の場合には、警察に連絡し、監察医もしくは検死官が検死を行い死亡診断書の作成をします。

遺言書有無の確認

相続では、遺言書の有無によって、その後の手続きが大きく変わってきますので注意が必要です
遺言書の種類には大きく2つあります。
1、自筆証書遺言…遺言者が紙とペンを使い自筆で作成する遺言書です。
         特別な手続きが必要ないため、他人に遺言内容を知られることはありません。
保管方法にも決まりがないために、そもそも見つからないケースも稀に起こります。
また、遺言書を発見した相続人は家庭裁判所に遺言書を提出して検認手続きを
する必要があります。

2、公正証書遺言…公証人が公証人役場で遺言者から遺言内容を聞き取りながら作成する遺言書です。
         専門家が作成するため、その内容は最も正確性が高いものになります。
         作成した遺言書は、その地域の公証人役場に保管されます。

各、遺言書の種類によって保管場所が異なりますので、考えられる遺言書のありかを確認する必要があります。

法定相続人の調査、確定

遺言書がある場合は、遺言書の内容に沿って相続人を決めていきます。
遺言書がない場合は法定相続人の序列に従って相続人が決まります。
具体的に誰が相続人になるかの調査は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を全て集めて判断します。
戸籍を取得する際は、被相続人の本籍地の役所へ行って(もしくは郵送で)取得しましょう。 

相続財産の調査、評価、確定

一般的に相続財産を大きく占めるのは、不動産と預貯金になります。
預貯金に関するお金の評価は言うまでもなく、その金額になりますが、
お金には、借金のようなマイナスの財産も発生することから、相続する場合は注意が必要です。
その他の物に関しては、財産評価によって価値が異なります。
相続税を計算する場合、不動産の評価額は路線価格や固定資産評価額を基に計算されますが、
相続分与で不動産を相続人で分ける際に参考にする評価額は、上記評価方法に合わせて不動産会社の評価額(時価)などのいくつかの評価方法があり、当事者同士で合意する必要があります。
合意に至らない場合は、裁判所が鑑定人を選任し、鑑定人による不動産の評価を行います。

評価方法によって、各相続人の損得に影響を及ぼしますので、慎重に判断する必要があります。

<プラスの財産>           <調査場所>
・不動産(土地/建物/借地権)      :固定資産税通知書や権利書等の調査
・現金、小切手、預貯金       :自宅、別荘、金融機関の口座記録、貸金庫等の調査
・株式、投資信託等の有価証券    :自宅、金融機関の口座記録、貸金庫等の調査
・貴金属、自動車、絵画等の動産    :自宅、別荘、勤務先、入院先、貸金庫等
・故人が受取人になっている生命保険金 :保険証券等

<マイナスの財産>           <調査場所>
・借入金(住宅ローン、カードローン等) :クレジットカード、請求書、全部事項証明書等
・未払の税金(固定資産税、住民税等)  :故人宛の督促状
・未払の入院費、治療費        :病院に問合せ
・保証債務              :故人宛の請求書、手紙等

遺産分割協議

遺産分割協議は、相続人全員で相続する財産の分け方を決める話し合いのことを言います。
被相続人(故人)が生前に遺言書を残している場合は、原則その内容に沿って遺産を相続することになります。
遺言書がない場合は、法定相続分の割合に沿って財産を相続します。
しかし、相続した財産のほとんどが不動産の場合や、相続財産に相続人が居住していた場合、相続人が相続財産の相続に関心がない場合等、必ずしも法定相続分で厳密に分ける必要はありません。
そういった事情を勘定して合意を前提に話し合うために遺産分割協議を設けます。相続人全員の合意があれば、どのような分け方をしても構いません。また、土地や建物などの不動産の場合、分割方法によっては財産の価値が目減りする場合があります。
不動産の分割方法は大きく4つの方法があります。適切な方法はケースバイケースで異なりますので、各相続人の事情に応じて話し合うことが大切です。(☞不動産の4つの分割方法はこちら)
話し合いで遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所において遺産分割調停を申し立てることで遺産分割協議の決着を図ります。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議による話し合いがまとまり、分割内容が確定したら「遺産分割協議書」を作成します。
遺産分割協議書には相続人全員の捺印が必要になり、後々のトラブル防止のために印鑑証明書の添付や実印による捺印が求められています。形式や書式のルールは特にありませんが、不動産の土地建物等は、登記謄本の記載内容の通り正確に記載する必要があります。

相続登記の申請

遺産分割協議書が完成し相続不動産の相続人が確定したら、次に相続登記の申請を行います。
相続不動産の相続人が確定しても、相続登記をしなければ不動産の名義は変更されません。
相続登記を行わないと、相続人が後にその不動産を売りに出すことも、賃貸契約を結ぶこともできないため、相続不動産の活用が難しくなります。相続登記の申請は義務ではありませんが、相続が発生したら早目に変更することをおすすめします。

不動産の相続登記とは

被相続人(故人)の名義だった不動産を、相続人の名義に変更する手続きを相続登記と言います。
相続登記は、普通の不動産所有者変更を行う手続きの「所有権移転登記」の相続版になります。
基本的には司法書士に依頼するケースが多いかと思いますが、ご自身で行うことも可能です。

不動産の相続登記、3つのパターン

不動産の相続には、共有(法定相続分)による相続、遺産分割協議による相続、遺言による相続が存在しますが、それぞれ相続によって相続登記に必要な書類が異なります。
これら3つの代表的なパターンにおける必要書類をご説明します。

遺言による相続登記

遺言には「公正証書による遺言」と「自筆証書による遺言」がありますが、
公正証書遺言はそのまま遺言証書として登記の申請に使えます
一方、自筆証書遺言は家庭裁判所の「検認」が必要になります。
検認後、遺言証書として登記の申請に使えるようになります。
遺言による相続登記に必要な書類は以下の通りです。
1. 遺言証書
2. 遺言者の死亡事項の記載のある除籍謄本
3. 被相続人の住民票の除票(本籍地の記載あり)
4. 遺言により相続する相続人の住民票
5. 固定資産評価証明書
6. 委任状
7. 受遺者の戸籍謄本

遺産分割協議による相続登記

本来、相続人の相続分与については法定相続分で定められていますが、相続財産のほとんどが不動産だった場合等、法定相続分で分けられない事業が生じます。それを協議により相続人全員が納得する形で、相続する割合や財産の調整を行いながら自由に遺産を分割する方法を遺産分割協議による相続と言い、対して、すべての相続財産を法定相続分で分割することを法定相続と言います。遺産分割協議による相続登記と、法定相続による相続登記に必要な書類は違いがあります。遺産分割協議による相続登記に必要な書類は以下の通りです。
1. 遺産分割協議書(相続人全員の自著・実印押印・印鑑証明書を添付)
2. 被相続人の出生から死亡にいたるまでの継続したすべての戸籍謄本
3. 被相続人の住民票の除票(本籍地の記載あり)
4. 相続人全員の戸籍謄本
5. 相続人全員の住民票
6. 固定資産評価証明書
7. 委任状

共有(法定相続)の相続登記

相続不動産に法定相続分通り、共有名義で相続登記する場合に必要な書類は以下の通りです。
※法定相続分通りの共有持分割合でなければ、遺産分割協議書が必要になります。

1. 被相続人の出生から死亡にいたるまでの継続したすべての戸籍謄本
2. 被相続人の住民票の除票(本籍地の記載あり)
3. 相続人全員の戸籍謄本
4. 相続人全員の住民票
5. 固定資産評価証明書
6. 相続人全員の委任状

遺産分割協議によって不動産を分ける方法
不動産の土地・建物を複数人で相続する方法は、以下の4つの方法があります。
遺産分割協議では、この4つの方法の中から適切なものを選択します。

・現物分割 相続人が不動産をそのまま単独相続する方法
      複数の不動産を各相続人に割り当てる方法
もしくは、一つの土地を相続人の数でそのまま区画を(分筆する)分ける方法。
・代償分割 不動産を特定の相続人で相続するが、他の相続人に相応の金額を支払う方法
・換価分割 不動産を売却し、現金にした状態で分割する方法
・共有分割 不動産の所有権を複数人で共有する方法

└現物分割
└現物分割のメリット
現物分割のメリットは分割方法が簡単で相続人の誰にとっても分かりやすく、遺産をそのまま相続することになるため手間が掛かりません。また、特例により課税を安く抑えられるケースがあります。
 とてもわかりやすい。
 相続事務手続の手間が少ない。
 特例により相続税が抑えられる場合がある。

└現物分割のデメリット]
現物分割のデメリットは、現物そのままだと各相続人の相続する遺産額のバランスが取れず、各相続人の取得すべき相続分と一致させるのが難しいため、不公平な内容となる可能性があります。
 取得すべき相続分とのズレが生じて、不公平な内容となる可能性がある。
 評価が難しい遺産の評価について争いとなりやすい。

└代償分割
└代償分割のメリット
現物分割で起きやすい不公平を、現金で調整する分割する方法です。
現金がない場合には別の資産で支払うことも可能です。特例により課税を安く
抑えられるケースがあります。
 相続分を正確に反映した分割となり、公平な分割となる。
 特例により相続税が安く抑えられる場合がある。

└代償分割のデメリット
代償分割では、取得した不動産の代わりに相手側に代償する現金や、資産が必要になります。持ち合わせがないと、そもそも実現しない分割方法になります。
 代償金の支払能力が必要であり、支払方法を巡って争いになることがある。
 不動産など、評価が難しい遺産の評価について争いになりやすい。

└換価分割
└換価分割のメリット
現金で分割するため、相続分通りの公平な分割が可能になります。遺産を売却して換価するので、相続人が資産を有していなくても分割が可能になります。       
 相続分を正確に反映した分割となり、公平な分割となる。
 遺産を換価させるため、代償金の支払能力が問題とならない。

└換価分割のデメリット
       相続不動産を一度換価する必要があるため、売却できないと分割ができません。
       また、共有状態になるため、売却価格についても相続人全員の合意が必要になります。       
 相続人の共有状態で売却するため、手続きが煩雑となる。
 売却できるまで時間と、販売手数料がかかる。
 希望する価格で売却できない場合がある。
 遺産不動産に居住するなど、そのままの利用ができない。
 売却した利益に対して所得税、住民税が課税される場合がある

└共有分割
└共有分割のメリット
相続不動産の所有権を複数の相続人で相続分に沿って持分割合を設定するだけなので、公平性が高く遺産分割協議はとてもまとまりやすくなります。
 相続分を正確に反映した分割となり、公平な分割となる。
 登記をするだけなので手間が少ない

└共有分割のデメリット
不動産の所有権を相続分に応じて共有するということは、相続後、売却するにも、家を建て替えるにも、共有者の同意が必要になります。そのため、相続手続きはシンプルですが、相続後の不動産活用等で、共有者同士争いになるケースは少なくありません。
 相続後の不動産活用で争いになることがある
 共有者の一人が亡くなると、共有持分が相続されるため共有者が増える傾向

共有登記がおすすめでない理由
不動産の土地・建物を単独所有している場合は、土地を売ったり、貸したりすることは、本人の自由な判断で行えますが、共有している場合は、不動産の活用方法によって共有者の同意が必要になってきます。

 不動産の売却:共有者全員の同意
 不動産の賃貸:共有持分の過半数の同意
 不動産の維持:各共有者が単独で可能

例えば、建物が古くなってきたので、共有者全員の同意のもと、売りに出すことになったとしても、現れた買い手の希望価格に共有者の一人が難色を示すと、話がまとまらず当然売却が難しくなります。
また、相続が連続して起きた際に、一つの不動産の土地建物に共有者が10人以上になってしまったケースや、共有者が海外にいて連絡がつかないなど、考えられる問題は幾多にも想定できます。
その他、共有持分(所有権割合)のみ売却することは各共有者単独で可能ですので、相続から時間が経過して、知らぬ間に共有者が全くの他人や、業者になっている場合も考えられます。
これらの問題を抱えないためにも、共有で登記をすることはおすすめしません。

不動産を相続したら名義変更が必要(相続登記)
名義変更(相続登記)は義務ではありませんので、決まった期間内に変更しなければならないといった決まりはありません。しかし、名義人が亡くなった瞬間から名義を変更するまでは、事実上その不動産は相続人全員の共有状態となります。いざ名義変更をする際に、同意や書類を取り付ける共有者の人数が膨れ上がって、手続きが複雑化する危険性を秘めていますので注意が必要です。

└不動産の名義変更にかかる費用
<ご自身で名義変更をする場合の実費>
不動産の名義変更には登録免許税と、役所で必要な各証明書を発行する手数料の費用が掛かります。
証明書を発行する費用は、相続人の人数によって変わってきますが、大体1万~3万円程度でしょう。
登録免許税は、不動産の固定資産評価額に下記の税率を掛けて算出します。
相続の場合      1000分の4
遺産分割の場合    1000分の4
遺贈の場合      1000分の20

また、役所で必要な証明書を発行する具体的な手数料は以下の通りです。
戸籍謄本 1通 450円
除籍謄本 1通 750円
改製原戸籍 1通 750円
戸籍の附票 1通 300円
住民票 1通 300円
不在住証明、不在籍証明 1通 300円
固定資産評価証明書 1通 300円
登記簿謄本(全部事項証明書) 1通 600円

<司法書士の専門家に依頼する場合の手数料>
相続登記をする場合は司法書士に依頼するのが一般的です。
司法書士に依頼する場合は、前述した(実費+登録免許税)費用に司法書士の報酬が上乗せされます。
相続登記のみ司法書士報酬の相場としては、7万~10万円が妥当な金額と言えそうです

実費=1万~3万円
※実費部分は何処に依頼しても変わりません。
登録免許税=固定資産評価額×0.4% 例)3,000万円×0.004=12万円 ※遺産分割の場合
司法書士報酬=7万~10万円
上記のケースでは合計すると約20万円~25万円程度となります。

└不動産の名義変更の必要書類
不動産の名義変更の必要種類について売買・贈与・相続別に解説していきます。
[売買による名義変更]
書類名            発行機関
☑売買契約書         ☑自分で作成
☑権利書           ☑売主が名義人になった際に法務局が発行
☑売主の印鑑証明        ☑住所地を管轄する市区町村役場窓口
☑買主の住民票        ☑住所地を管轄する市区町村役場窓口
☑固定資産評価証明書    ☑不動産所在地の市区町村役場発行窓口

[贈与による名義変更]
書類名          発行機関
☑贈与契約書          ☑自分で作成
☑権利書            ☑売主が名義人になった際に法務局が発行
☑贈与をあげる人の印鑑証明   ☑住所地を管轄する市区町村役場窓口
☑贈与をうける人の印鑑証明   ☑住所地を管轄する市区町村役場窓口
☑固定資産評価証明書      ☑不動産所在地の市区町村役場発行窓口

[相続による名義変更(相続登記)]
遺言書がある場合
書類名                    発行機関
☑遺言証書                  ☑自分で作成
☑遺言者の死亡事項の記載のある除籍謄本    ☑本籍所在地の市区町村役場発行窓口
☑被相続人の住民票の除票(本籍地の記載あり) ☑住所地を管轄する市区町村役場窓口
☑遺言により相続する相続人の住民票      ☑住所地を管轄する市区町村役場窓口
☑固定資産評価証明書             ☑不動産所在地の市区町村役場発行窓口
☑委任状                   ☑自分で作成
☑受遺者の戸籍謄本              ☑本籍所在地の市区町村役場発行窓口

遺産分割協議を行った場合
書類名                              発行機関
☑遺産分割協議書(相続人全員自著・実印押印・印鑑証明書を添付)  ☑自分で作成
☑被相続人の出生から死亡にいたるまでの継続したすべての戸籍謄本  ☑本籍所在地の市区町村役場発行窓口
☑被相続人の住民票の除票(本籍地の記載あり)           ☑住所地を管轄する市区町村役場窓口
☑相続人全員の現在の住民票                    ☑住所地を管轄する市区町村役場窓口
☑固定資産評価証明書                       ☑不動産所在地の市区町村役場発行窓口
☑委任状                             ☑自分で作成

法定相続分(共有)通りに相続する場合
書類名                              発行機関
☑被相続人の出生から死亡にいたるまでの継続したすべての戸籍謄本  ☑本籍所在地の市区町村役場発行窓口
☑被相続人の住民票の除票(本籍地の記載あり)           ☑住所地を管轄する市区町村役場窓口
☑相続人全員の戸籍謄本                      ☑本籍所在地の市区町村役場発行窓口
☑相続人全員の住民票                       ☑住所地を管轄する市区町村役場窓口
☑固定資産評価証明書                       ☑不動産所在地の市区町村役場発行窓口
☑相続人全員の委任状                       ☑各自で作成

└戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本、収集の際の注意点
相続登記を行う際に必要な書類の中で一番面倒なのが、この戸籍関係の書類収集です。
まず、はじめに戸籍の種類を理解し、次に戸籍謄本を収集する上での注意点を説明していきたいと思います。
☑現在戸籍
現在戸籍とは、今の戸籍のことを言います。
☑除籍
除籍とは、戸籍に記載された人が死亡や結婚、離婚、本籍地の移転などによって、その戸籍(本籍地)に記載されていた人全員がいなくなり、閉鎖された戸籍のことを言います。
☑原戸籍/改正原戸籍
戸籍は法律の改正によって様式などが度々変わることがあります。
新しい戸籍に変わるまで使われていた古い戸籍のことを原戸籍と言います。
改製原戸籍は、改製が行われたときに本籍地だった役所に保管されています。

[戸籍収集の注意点]
1. 被相続人(故人)に関する戸籍関係書類については、死亡したことの記載が必要になるので、
被相続人(故人)の生前や、死後直後に取得し死亡の記載がされていない戸籍謄本は相続登記に使えません。

2. 戸籍を請求できる人は限られています。
原則として取得できるのは本人及び配偶者、直系血族になる父、母、子、孫に制限されています。
それ以外の第三者が戸籍を取得する場合は委任状が必要になります。

3. 被相続人(故人)戸籍は、過去に戸籍があった市区町村が遠方だった場合にはそこの市区町村役場で取得する必要があります。郵送でも請求することができます。

└相続登記は自分でできる?
ご自身で相続登記を行うことが可能です。相続と登記を行う方法は大きく3つあります。
・法務局窓口で申請する方法
・郵送申請する方法
・オンライン申請する方法
しかし、被相続人(故人)の関する書類や、相続人全員の書類を集める作業は、名義変更の理由や関わる人数によってとても複雑になります。ご自身でやるか、専門家に依頼するかの判断は、
☑名義変更の原因、☑不動産の数、☑手続きの複雑さ ☑費用
といったポイントで総合的に判断することをおすすめします。

└不動産の相続登記の書き方
不動産の登記所は法務局で行います。その際に記載するのが、登記申請書になります。ここでは、実際の登記申請書の書式に沿って記載方法を説明していきます。

【登記の目的】
被相続人が、物件の単独所有者の場合は「所有権移転」と記入します。
所有者が共有の場合は被相続人の名前を入れて「○○○○持分全部移転」と記入します

【原因と日付】
相続が開始した日を記入し「平成○年○月○日 相続」と記入します。
※戸籍に記載された被相続人の死亡した日付

【相続人】
被相続(故人)の名前を()も中に (被相続人 ○○○○)と記載します。
(被相続人 ○○○○)の下には相続人の「住所、氏名、連絡先番号」を記載します。
記載の横に印鑑を押します。
相続人が複数いる場合は、名前の横に所有権割合を 「持分○分の○」と記載します。

【添付書類】
・登記原因証明書情報
「登記原因証明情報」という書面があるわけでなく、戸籍謄本、改製減戸籍、除籍などの書類全般を指します。
遺言書がある場合は遺言書や、遺産分割協議を行った場合には遺産分割協議書も登記原因証明情報になります。
・住所証明情報
相続人の住民票です。
名義変更先が複数の相続人になる場合は新たな名義人となる相続人全員の住民票が必要です。
・固定資産税評価証明書
固定資産税評価証明書も添付しますが、実務上添付する慣行になっているだけで、
添付書類欄に記載する必要はありません。

【申請年月日と申請する法務局】
法務局に登記申請書を提出する日と、提出先の法務局を記載します。
郵送の場合は、発送日を記載してください。
※登記後、登記識別情報通知書の交付を郵送で返却を希望する場合は、
 「申請人の住所へ送付の方法により登記識別情報通知書の交付を希望します」と記載しましょう。
 その他、原本還付書類、登記完了証、の郵送についても上記文章同様に記載します。

【課税価格、登録免許税】
課税価格=最新年度の固定資産評価証明書、課税明細書の【評価額】もしくは【価格】と
記されている土地建物全ての不動産の評価額を合算した価格の1,000円未満を切り捨てた
金額が課税価格になります。

登録免許税=課税価格に税率(相続の場合は0.4%)を掛けた金額の100円未満の金額を
切り捨てた金額が登録免許税になります。
登録免許税が1,000円未満でも、最低金額の1,000円を納める必要があります。

【不動産の表示】
不動産情報を記載します。不動産番号(登記事項証明書を参照)を記載した場合は、
その他の記載を省略することが可能です。

└相続登記に期限はないが必ず行うべき
相続登記は期限がありません。相続登記とはそもそも、物や権利義務などの権利関係を、社会に公示するための制度です。相続登記を行わないと、被相続人(故人)名義のまま社会に公示される状況になるため、被相続人(故人)に変わって相続人が社会に主張対抗することができません。しかし、相続不動産に掛かる固定資産税のようなコストは相続登記で名義変更をせずとも相続人に課せられます。それでは、具体的にどういった問題が生じるのか確認していきましょう。

相続登記しないとどうなる?
└相続不動産を活用できない
相続登記で不動産の名義変更をしないと、せっかくの不動産を活用することができません。
登記をしなくても、理論上では売却自体は可能ですが、そもそも登記簿上の所有者ではなければ、通常、トラブルを警戒されて不動産の売却は難しくなります。
また、融資を受ける際に「不動産を担保に入れてお金を借りる」といった担保ローンの抵当権の設定ができません。

└他の相続人が勝手に売却、賃貸する可能性がある
考えにくいですが、実際に相続問題で起こりがちなのが、遺産分割協議がまとまっていないのにも関わらず、勝手に相続人の一人が自己名義で登記を行い、共同財産である相続不動産を第三者に売却してしまったケースです。
この場合、売却した者の持分以外については権限がない状況で売却しているため、その部分については本来の所有者は第三者に移転登記の抹消を請求できます。しかし、取り戻せるのは本来の所有者の持分のみに限定されるため、第三者に売却した者の持分は第三者に渡り、共同相続人は第三者と共有状態になることになります。

こういった場合に、民法905条では、一定の要件を満たすことで遺産分割前に共同相続人が行った第三者に対する相続分の譲渡を取り戻せるとしていますが、過去の判例において、民法905条の規定はこのような特定不動産の持分の売却には適用されないとしている傾向がありますので注意が必要です。

└他の相続人が勝手に共有登記する可能性がある
共同相続人がいる場合、遺産分割協議が成立するまでの間、不動産の名義は法定相続分で相続人の共有状態になります。法定相続のように、共有持分に応じた相続登記であれば遺産分割協議書がなくてもできてしまいます。
つまり、相続が発生して不動産の相続登記をいつまでも放置していると、共同相続人が勝手に法定相続分通りの共有名義で不動産の相続(共有)登記をおこない、自身の共有持分のみを第三者に売却することができてしまう恐れがあります。その上で、買主である第三者が先に不動産の所有権移転登記を済ませてしまったら、他の相続人は買主に対し、売買の無効を主張できなくなる恐れがあります。
これは、遺産分割協議が終了して遺産分割協議書が制作済みでも起こりうるリスクになります。遺産分割協議書の作成と不動産の相続登記はセットにして考えることをおすすめします。

└再度の相続が起こると大変
不動産会社や、相続手続きを多く手掛ける専門家が一度は経験するのが、子世代の相続が発生し不動産の共有名義人が溢れかえっている状況です。不動産価値が高額な物でも一人当たりの共有持分の財産価値が微々たるものなってしまっており、権利をまとめることすら難しくなってしまっている不動産は少なくありません。この場合、いきなり孫への相続登記はできないので、孫が不動産の名義を変更するには、一旦、最初の被相続人の息子へ名義変更をして、その後に孫への相続登記をしなければなりせん。非常に多くの書類と手間が掛かり、そもそも最初の被相続人の遺産分割協議書がない場合は、本来相続できるはずの共有不動産持分を全部相続できなる恐れがあります。

不動産を相続した場合にかかる相続税、計算方法
不動産である土地建物を相続した場合に支払う税金は「登録免許税」と「相続税」の2種類になります。
ここでは、相続税についてご説明します。

└不動産を相続したら相続税がかかる
不動産に限らず、相続した財産総額に応じて税金が掛かります。しかし「基礎控除」や「特別控除」「特例」があるため、単に相続財産総額に税率を掛けるといった内容にはなりません。平成27年1月1日から相続税の税制改正が行われて以降、「基礎控除」が引き下げられ、東京都内では一般のサラリーマンの相続でも相続財産に不動産が含まれると、相続税が掛かる対象になりやすいと言われています。それだけ、相続税は他人事ではなくなっている状況です。
ここで重要なのは、相続税の支払いは基本的に現金での支払いが原則となっている点です。物納も可能ですが、物納をするには一定の条件があります。まず、延納(分割)でも金銭で納付することが困難な場合に限られ、かつその納付を困難とする金額を限度とする決まりがあり、それらの審査を経て許可を得る必要があります。少しでも負担を少なくするためにも、まずは相続税がどれほど発生するかをしっかり把握して、納税資金の対策を行うことが重要と言えるでしょう。

└不動産を相続した場合にかかる相続税の計算方法
では、不動産を含め相続財産に課税される相続税の計算方法をご説明します。
相続税の計算方法の全体像をお伝えすると
1、法定相続人が法定相続分で全ての遺産を引き継いだと仮定して、法定相続人ごとの税額を計算します。
2、それを一度合算し、実際に遺産を相続した割合で按分計算した税額が、各相続人の相続税の額となります。
結果的に、財産の多くを占める不動産を単独相続すると、不動産評価額の全体の遺産に占める割合に比例して相続税が割り当てられます。

①相続税の計算に必要不可欠な相続人の知識
遺産を相続する相続人は、遺言で相続人の指名がある場合を除き、法定相続人(民法で定められた親族)と定められています。更に法定相続人の中でも相続する優先順位、割合(法定相続分)も定められています。

■ 常に相続人になる:配偶者
■ 第1順位:子(直系卑属)
■ 第2順位:父母や祖父母(直系尊属) ※第1順位がいない場合
■ 第3順位:兄弟姉妹 ※第2順位がいない場合 

配偶者のみ 配偶者が全部相続
配偶者と子 配偶者 1/2 、 子 1/2
配偶者と直系尊属 配偶者 2/3 、 直系尊属 1/3
配偶者と兄弟姉妹 配偶者 3/4 、 兄弟姉妹 1/4
注)子、直系尊属、兄弟姉妹が複数いる場合は、上記の法定相続分の分母に人数を掛けます。この割合で按分計算をします。
②相続財産の総額を計算する
 課税される財産
1、被相続人が所有していた財産
 現金、預貯金、
 有価証券、ゴルフ会員権
 不動産(土地、建物)
 事業用資産
 自動車、絵画、
 貴金属、骨董品等
2、死亡保険金、死亡退職金
3、3年以内の生前贈与

 課税されない財産
1、勤務先からの弔慰金 ※非課税となる金額には上限あり
2、墓地、仏壇、仏具などの祭祀財産 ※生前に購入されている物限定
3、相続税の申告期限までに国などに寄付した財産
4、死亡保険金、死亡退職金の内、500万円×法定相続人の数 で計算される範囲

 マイナスされる財産・費用
[財産]
1. 借入金(住宅ローン、マイカーローン等)
2. 未払の医療費、税金
3. 被相続人が不動産賃貸を経営していた場合などの預かり敷金
   [費用]
1. 仮葬儀・通夜・本葬の費用
2. 葬儀の前後で生じた出費で通常必要と認められるもの
3. 遺体の捜索、運搬費用
 ③ここまでの項目を合算、相殺し遺産総額の評価額を計算します。
 遺産総額=[課税される財産]-[マイナスされる財産・費用]
 ここから先は実際のシミュレーションを添えてご説明します。
 例)遺産総額:1億円
   法定相続人:配偶者と子2人(計3人)
   ※相続財産は法定相続分で分割します。
   ※配偶者控除以外の控除/各種特例は考慮しないものとします。
 
④ ③の遺産総額から、基礎控除額を差引きます。
 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
 課税遺産総額=[遺産総額]―[基礎控除額]
 例)基礎控除=3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
   課税遺産総額=遺産総額1億円―基礎控除額4,800万円=5,200万円

⑤法定相続分による各相続人の取得金額を求めます。
例)配偶者:取得金額=課税遺産総額5,200万円×法定相続分1/2=2,600万円
子(一人あたり):取得金額=課税遺産総額5,200万円×法定相続分1/4=13,000万円

⑥相続税の総額を求めるために、各相続人の仮の税額を求めます。
 相続税の税率構造は下記のとおりです。各取得金額に応じて控除額も設定されていますので、
税額を求める際に、控除額を差引く事を忘れないようにしてください。

例)配偶者の(仮)税額=取得金額2,600万円×税率15%-控除額50万円=340万円
  子の(仮)税額(1人あたり)=取得金額13,000万円×税率15%-控除額50万円=145万円

⑦相続税の総額を求めます。
例) 相続税総額=配偶者の(仮)税額340万円+子の仮の税額145万円×2人分=630万円

⑧相続税の総額を実際の遺産分割の割合(この例では法定相続分)で分けて、各人の相続税額を求めます。
 例)配偶者の相続税額=相続税総額630万円×遺産分割の割合1/2=315万円
   子の相続税額(1人あたり)=相続税総額630万円×遺産分割の割合1/4=157.5万円
 ※ここで配偶者控除が適用されます。
   そのため、配偶者の相続税額=315万円⇒0円
   子の相続税額(1人当たり)=157.5万円 
以上のことから、この度のケースで発生する相続税額は
合計すると、子2人の相続税額315万円(1人あたり157.5万円)となります。

 ここで、各種控除内容についてご説明させていただきます。
 ■配偶者控除
配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。※国税庁HP引用
(1) 1億6千万円
(2) 配偶者の法定相続分相当額

 ■未成年者の税額控除
相続人が未成年者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引きます。※国税庁HP引用
控除額の計算は、相続のときから20歳になるまでの年数×10万円 となります。
(年数に1年未満の端数があるときは切り上げます。)

■障害者の税額控除
相続人が85歳未満の障害者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引きます。
• 一般障害者
相続のときから85歳になるまでの年数×10万円
• 特別障害者
相続のときから85歳になるまでの年数×20万円
(年数に1年未満の端数があるときは切り上げます)

以上、相続税について解説しきました。
配偶者控除があるので、配偶者に相続させることで、その時の税金は先送りすることができます。
しかし、その配偶者が亡くなられた時は、配偶者控除が受けられなくなるため、相続人の負担はとても大きくなります。2回目の相続も想定しながら、1回目の遺産分割協議を行うことが必要です。
相続税の計算で一番面倒なのは、相続財産評価になります。
不動産、動産を含め、早めに財産評価を行うことをおすすめします。

不動産を相続する場合に知っておきたいこと
└相続対策で不動産の相続税評価は大幅に下げられる
所有している不動産を最も相続税評価額を下げる方法として一般的なのは「賃貸経営」といえるでしょう。
不動産の土地建物を第三者に賃貸することで、土地は「貸家建付地」、建物は「貸家」と評価されます。
自用の場合と比べて相続税評価額は20%~30%程度圧縮できます。
賃貸経営で儲けが出てしまった場合は、暦年110万円までの非課税贈与や、賃貸不動産その物を、(評価額2,500万円まで贈与税が非課税)贈与して相続時に相続税として清算する「相続時精算課税制度」を活用するやり方があります。「相続時精算課税制度」を利用した後の賃貸収入は息子さんが得られますので、得られた賃貸収入を将来、相続が発生した際の納税資金の準備に充てることもできます。

└不動産を相続した場合にかかる税金一覧
不動産に相続した場合にかかる税金は以下の通りです

└不動産を相続したら管理者責任もついてくる
不動産を相続したら、相続財産の管理責任は相続人にあります。
遺産分割協議が済んでいる場合は、その不動産を相続した相続人が管理責任を負うことになります。
遺産分割協議がまだの場合は、法定相続分に該当する相続人全員が管理責任を負います。
近年では、空き家問題等で建物の老朽化が問題視されています。老朽化や災害などで、建物の倒壊や一部破損し他人の所有物や人を傷付けた場合、相続人は過失責任を問われることになります。 このような事態を招かないためにも、相続財産はしっかりと管理する必要があります。
また、相続放棄をした場合でも、次に相続人となる人が現れて相続財産の管理するようになるまでは、相続放棄した本人の責任で相続財産を管理しなければなりません。相続人が一人しかいなく、その方が相続放棄をされた場合など、どうしても管理できない場合は、家庭裁判所で「相続財産管理人」を選任してもらう必要があります。

相続登記を専門家に依頼する方法
└登記の専門家は司法書士
司法書士はいわゆる登記の専門家であり、登記申請の代理権を有しています。相続や贈与、その他売買や離婚の財産分与等、不動産の所有者が移転したときには所有権移転登記をしなければなりません。実際には登記だけをする司法書士は少なく、遺言書の作成、相続放棄、書類収集など、相続一つとっても幅広い業務に対応しています。
[対応サービス]
■相続登記
■不動産の抵当権抹消登記
■遺産分割協議書作成
■相続人関係説明図作成
■戸籍収集
■相続放棄
■遺言書作成・執行・検認
■相続財産調査

[相続登記料金相場]
実費+司法書士報酬(7万円~10万円)
※ご依頼するサービスによって料金相場は変動します。

└書類収集だけなら行政書士にも依頼が可能
行政書士は、基本的に書類作成、書類取集の専門家になります。
[対応サービス]
■戸籍収集
■遺産分割協議書作成
■相続人関係説明図作成
■遺言書作成

[戸籍収集料金相場]
実費+行政書士報酬(3万円~5万円)
※ご依頼するサービスによって料金相場は変動します。

└紛争解決には弁護士に依頼
弁護士は基本全ての相続業務を代行できます。
しかし、職業柄登記だけや、戸籍収集のみを行う弁護士事務所は少ないでしょう。
弁護士が主戦場としているのが、相続人間の紛争解決になります。依頼者の代理人として、
相手相続人と示談交渉や裁判を行います。

■遺産分割協議、調停、審判の代理人
■遺産分割協議書作成
■遺留分減殺請求
■相続財産調査
■相続人調査
■相続放棄
■遺言書の作成・検認
■遺言執行者の就任
■事業承継

[遺産分割協議料金相場]
着手金:20万円~40万円
報酬金
 300万円以下の部分が16%
 300〜3,000万円の部分が10%+18 万円
 3,000万円~3億円の部分が6%+138 万円
 3億円を超える場合が4%+738 万円
※ご依頼するサービスによって料金相場は変動します。

親の土地を相続する際に知っておきたい5つのこと
└親が認知症になる前に相続の話し合いを
親が認知症になってしまった場合、介護施設の入居費用などまとまったお金が必要になります。しかし、認知症になり意思能力がないと判断されると全ての法律行為(契約手続き等)ができなくなります。
特に不便になるのが大きく3つあります。
1つ目は金融機関の口座が凍結される点になります。
2つ目は不動産売却の手続きができなることです。
両方とも成年後見制度を利用して対処する必要があります。口座凍結に関しては成年後見人がご本人に代わって財産の管理や契約をおこなうことができますが、それには多くの手間がかかってしまいます。
不動産売却に関しては、成年後見人となっている場合は家庭裁判所の許可を得て売却することができますが、不動産の売却は、昨今では家庭裁判所の許可が下りにくいのが現状です。
3つ目は財産の全容が分からなくなり、相続財産の調査が難航します。
時間と手間とお金が掛かり、ご家族のご負担は何倍にまで膨れ上がります。そうならないためにも、親が認知症になる前に相続の話合いを行うことが大切です。

└節税ばかりでなく、分け方についても話し合う
相続で一番重要なのは、節税対策でなく、納税対策でもなく、相続紛争対策です。
家族といえども、相続で紛争にまで発展してしまうと、その後の家族間の仲は修復が難しいのが現状です。
特に不動産が遺産の多くを占める場合は、誰が相続して住むのか、賃貸経営など運用をするのか、それとも売却するのか、といった問題をあらかじめ話し合い家族間の公平性を意識することが重要になります。

└不要な土地を相続したら、相続放棄を検討する
通常、土地といえば資産価値がある財産と判断しますが、なかには全く利用価値のない土地も存在します。
そういった土地にも固定資産税などの管理費は発生しますので放置していると負の財産になりかねません。
土地の処分方法はいくつかありますが、利用価値のない土地を所有してまった場合、簡単には手放すことができません。実は所有権を放棄する登記方法はありません。民法には「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」とありますが、土地の所有者がその所有権を一方的に放棄することはできないので、この相続時の相続放棄がとても重要になるのです。相続は被相続人が所有していた全ての財産債務を引き継ぐことになりますが、相続放棄は、財産債務の一切を相続しない方法になるため、極端な選択を迫られることになります。
相続放棄をする場合は家庭裁判所への手続きが必要になります。
[土地の処分方法]
 売却…利用価値がない土地の買い手はなかなか現れません。公共事業や大規模な開発がない限り買い手のつく可能性は低いと言えるでしょう。
 寄付する…譲渡先として、国、法人、個人が考えられますが、利用価値がない土地は欲しがらない可能性が高いと言えます。

└土地の共有はやめよう
土地を共有名義にすると、相続による世代交代で、共有者が増えるごとに共有者同士の関係は薄くなる傾向があります。共有者同士で意見を一致させることが困難になり、共有関係が原因で紛争に発展するケースは数多く見受けられます。また、共有にすることで管理がされず放置される土地も数多くあります。管理責任を問われる前に、共有物分割の話し合いや、第三者への売却等、共有関係は早期に解消することをおすすめします。

└相続税の額は税理士によって大きく変わる
「税金の計算だけ」なら誰でも同じ答えを出せます。しかし、相続税申告は通常の会社の記帳代行や決算等と比べ、計算の内容や、特に土地の評価額算定は難易度が非常に高く、相続税申告の経験有無で、相続税の額は大きな差が生じる場合があります。また、1年間で発生する相続税申告の件数を、全国の税理士数に割り当てると、1年間に税理士一人当たりが対応する相続税申告数は2件以下になります。相続に精通し経験豊富な税理士はそれほど多くない状況です。相続税の申告を依頼する場合は相続に注意力している税理士を選ぶことをおすすめします。

質問と回答
└亡くなった親の名義で家に住み続けることは可能?
可能です。相続登記は義務ではありませんので、いつまでに名義変更をしなければならないといった決まりはありません。しかし、住み続ける分には問題ありませんが、土地建物を売却する場合や、賃貸をする場合などの際には、名義を変更する必要があります。また、ご自身が亡くなり相続が発生する場合は、残された相続人の方に負担を残すことになりますので、速やかに手続きすることをおすすめします。

└親が亡くなって10年以上名義変更を行っていない、問題ある?
不動産の名義変更は問題ありませんが、ここで気を付けなければならないのが、銀行預金の預金債権が10年で消滅する点です。相続が開始し金融機関が預金者の死亡を知ると口座は凍結されます。金融機関に対して預金の払い戻し請求を10年以内にしないと時効消滅します。凍結を解除するためには、戸籍謄本で相続人を確定させ、相続人全員の署名と実印、印鑑証明書をもって所定の手続きをする必要があります。実務上では10年以上経過しても支払いに応じてもらえるようですが、手続きが面倒になりますので早めに手続きを行いましょう。

└相続人が3人、1つの不動産を共有名義で相続登記できる?
できます。共有名義で相続登記する場合、遺産分割協議により「相続人が任意の持分割合で相続する」場合と、「相続人全員の共有名義で法定相続分通りに相続する」場合とがあります。

└相続した不動産が地方にある、都内で相続登記できる?
できます。原則として、不動産の所在地を管轄する法務局へ行って相続登記を申請しなければなりませんが
現在ではすべての法務局でインターネットを通じたオンライン登記申請が可能です。

└相続した不動産を売却した、税務署から税金の支払い通知が送付されてくる?
きます。売却益が出た場合は、必ず確定申告が必要です。譲渡所得に対して所得税、住民税が課税されます。
不動産の売買があると、税務署は登記情報を把握しているので、不動産売買の情報も当然把握しています。

まとめ
ここまで不動産の相続を中心にご説明してきましたが、相続財産の多くを不動産が占める昨今では、その不動産にまつわる相続でさまざまな問題が生じています。しかし、その多くは危険性やルールを把握してないがゆえに起こりうる問題であり、ほとんどの問題には解決する糸口があります。そして、その解決策は各専門家が答えを持ち合わせています。不動産会社、弁護士、司法書士、税理士など、現在では、無料で相談に応じてくれる専門家もだいぶ増えてきました。このサイトを通じて専門家を身近に感じていただき、専門家に相談するきっかけになれば幸甚です。

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